【毎日新聞(滋賀版)】「石井電気システム株式会社」を紹介する記事が掲載されました

規模は小さく知名度は低くても、優れた実績や高い市場シェアを持つ企業を、ドイツでは「隠れたチャンピオン」と称賛します。滋賀北西部の豊かな自然の中に、競争優位性の高い潜在力を持つ日本のチャンプを見つけました。ローコストで耐用性に優れ多機能なデマンド・コントローラーを独自開発・製造する、石井電気システム株式会社です。

毎月の電気料金は、契約電力にもとづく基本料金と、使用電力量料金により算定されます。基本料金の根拠となる最大需要電力（デマンド値）を抑え、設定された目標値を超えぬよう使用電力量を常時監視し、警告や自動制御をおこなう装置が「デマンド・コントローラー」です。

電気管理技術者の石井隆夫さんは、それまで安全だけを優先し電気保安業務に勤しむ中で、1997年に京都で開催された地球温暖化防止会議への参加をきっかけに、大企業に比べ中小企業の省エネ対策が遅れていることを危惧。最も費用対効果の大きい節電は、消費電力の半分近くを占めるエアコンの「デマンド・コントロール」と考え、そのシステム開発に着手しました。

当時、大手電機メーカーが開発したデマンド・コントローラーは高額で、零細企業には手が届きません。石井さんは専門外のプログラム制御を独学し、同僚の技術者のアドバイスを得ながら改良を重ね、ほぼ材料費だけの低価格で「スマート・eセーバーISS」を製品化。まずは既存の顧客に提供すると、経費削減はもとより短期間で元が取れたと喜ばれ、その評判が口コミとブログで全国に広まり、現在1万台以上もの売り上げにつながっています。

基本の特許技術は「時分割デマンド制御プログラム」。一般的なデマンド時限である30分間を3分間ごとに分割し、エアコンの長時間連続停止による不快感を与えることなくピークカットできる機能です。階層やエリア、居室ごとのコントロールも可能です。また「環境対応型デマンド制御システム」も特許化。電力ピーク時以外でもエアコンの稼働を3分間隔で断続的にセーブし、環境に合わせ使用電力量を削減する機能です。

この他にも、外気の不快指数に応じて目標電力を自動的に切り替え、エアコンの無駄な運転を防ぐ「気候対応目標電力自動シフト機能」や、制御ケーブルの配線工事が不要な「無線制御機能」、スマホやパソコンによる「遠隔監視・操作機能」など様々な機能を付加し、ISSシリーズは進化を続けています。主要部材は過酷な環境での使用に耐えられるFA機器で、設置後20年近い初期製品も問題なく稼働しています。

顧客満足度を重視するホテルやレストラン、個別対応が必要な病院や老人施設、広大なデータセンターやディスカウントストア、さらに近年は大企業でも採用され、効能を発揮。ある大手食品スーパーでは年間1億数千万円もの電力削減があり、かたやデマンドシステムの導入が難しいと言われる契約電力50kW未満の小規模店舗からも有効性が報告されています。

同社の原点とも言える経営理念は、「中小零細事業所のためにローコストな省エネ対策装置を開発する初心を忘れず、一つ一つ実績を積み上げて口コミで広がる仕事をしていく」。父の背を見ながら2021年に代表取締役に就いた裕介さんは、「顧客の声を聞きすぎるほどの父のサービス精神や弛みない研究心は絶やすことなく、今後は業務の標準化やデータビジネス、海外展開も進めたい」と意気込みます。

東日本大震災以降、政府の要請によりデマンド・コントローラーの導入が進み、地球温暖化対策や環境保護意識の高まりで今後さらなる需要が見込まれます。時流の先陣を切り未来のために、余力のない者や使い手の身になり電力削減に尽力する石井電気システムの存在を滋賀の誇りに思うとともに、より強い光輝を放つことができるよう支援を続けていきます。