有限会社ファームやまね

2025/2/19 毎日新聞

近江米で知られる滋賀県は、耕地における水田率が約93%と高く全国2位、また農業産出額のうち米が約50%を占めています。豊かな土壌と寒暖差に恵まれて甘みや香りの強い米作りを、132haという広大な農地で営む有限会社ファームやまねを訪ねました。

40数年前、個人事業で飼っていた牛のエサ用に25haから水稲栽培を始めましたが、牛肉の輸入自由化などを機に畜産業を止めて米作り一本に。幼少から父の膝の上で大きなトラクターに慣れ親しんだ山根左近社長は、県立農業大学校を卒業後、迷わず家業に入り、根っからの機械好きが高じてさまざまな農機の操縦や修理を独学で駆使しながら事業を拡大していきました。

米のおいしさの秘訣は、五つのこだわり農法にあります。最も注力しているのは「土作り」。もみ殻と牛糞を混ぜて発酵させた自家製堆肥を毎年撒きます。手間を要し避ける農家も多い中で当たり前のように先代から続き、地元のみならず岐阜や京都、大阪、愛知など遠方の顧客からも求められる味を生む所以でしょう。また代掻きは、土の高低差を5㎝以下に抑えて極力水平に。雑草や害虫を除去し、苗をよく根付かせて発育のムラをなくす、最も難しい職人技と社長は言います。

二つ目は「水」。伊吹山地と鈴鹿山脈の山間から湧く冷たい水は、他にない風味を醸す土地の利で、水門に専属者を配して耕地全体に行きわたるよう細やかに管理しています。三つ目は「低農薬」。食の安全と環境負荷の低減に配慮しています。四つ目は「省力化」。GPS自動直進アシスト機能付き田植機などの大型機械や無人ヘリコプターなどを活用し、従業員8名で生産性を上げています。また、先駆けてクラウドによる生産履歴システムを導入し、地図や作業の進捗、燃料の残量、作物の状況などをスマホで共有。「革靴とスーツ姿で農機に乗れる」ほど、作業中の降車も手仕事も不要です。五つ目は「保管」。知り合いの海運業者から譲り受けたコンテナで家庭用のエアコンを使い、米に最適な16℃以下の環境を保持します。他に水槽用のヒーターで温水を循環させるオリジナルの催芽法など、生産から管理までとことんこだわる「やまね流」です。

主な品種はあきたこまち、コシヒカリ、大粒ダイヤ、ヒノヒカリなど多様な10種。他に自家製の米麹と大豆を使った味噌作りやオンラインショップも手掛けています。

かつて日常生活や地域行事に密着していた農業は大きく変化し、今、担い手の高齢化や後継者不足による離農などの危機に直面しています。「耕作放棄地のない米原にしたい」。ファームやまねは、スマート農業と昔ながらの技を融合し、経験のない若者や女性も魅力を感じる労働環境に変えて未来を拓いています。「まいばら農業塾」「新規就農者受入支援事業」など自治体による支援や、農業機械、設備への投資を迅速かつ継続的に支える地域の金融機関の存在はありがたいとのこと。「県民みんなで創る滋賀の『食と農』を通じた『幸せ』」を掲げる滋賀ならではの特性を生かし、あらゆるステークホルダーが一丸となり、持続性の高いアグリビジネスに転換する必要性を感じました。

企業概要

有限会社ファームやまね

(米原市柏原字稲倉4917)

https://farm-yamane.com/

米の生産・配達・販売、加工食品の販売、オンラインショップの運営。

お問い合わせ先

(公財)滋賀県産業支援プラザ 
情報企画課

TEL
077-511-1411

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