【毎日新聞(滋賀版)】「近江化成工業株式会社」を紹介する記事が掲載されました
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近江化成工業株式会社
2024/10/23 毎日新聞(滋賀版)
チャールズ・オライリー氏とマイケル・タッシュマン氏が1996年に提唱した「両利きの経営」。「既存事業の深化」と「新規事業の探索」を両立させる経営理論で、激しい環境の変化を背景にイノベーションの必要性が高まっている近年、改めて注目されています。多くの企業が苦戦し、特に経営資源に乏しい中小企業には難しいと言われる中、この理論の実践で成果を上げているのが近江化成工業株式会社です。
大企業のマーケティングに携わり海外を飛び回っていた小林清さんが、予期せず実家の事業を承継したのは2008年。夢を追い1982年に創業したウレタン素材の熱プレス加工場で技術を磨き続けてきた父の背中に魅了されると共に、「最後の偉業」として契約してくれた新幹線の座席シートの加工事業に少年期の鉄道好きが再燃したのが理由でした。社長就任間もなく、さまざまな課題に気付き、大企業での経験値と生来のチャレンジ精神で企業改革に向けて始動しました。
まず手掛けたのは、父の技術力に頼らない業務の標準化。さらに着手したのがウレタン事業からの撤退と、新幹線の座席シートのクッション材料「ブレスエアー(東洋紡エムシーの商標登録)」を軸としたポテンシャルの高い新規事業への展開でした。素材の通気性、高反発性、リサイクル性、ウォッシャブルという特長を生かして、寝具、介護向け用品、ペット用マットなど多様に製品化し、自社で立ち上げたネットショップ「爽快潔リビング」で直接販売。「ブレスエアーであったらいいなを叶えます」をビジョンに、売り上げは順調に伸びました。
転機は2018年。東洋紡敦賀事業所の火災によるブレスエアーの製造設備の焼失に加え、同素材のレッドオーシャン化により独自の価値創出を迫られました。それまでの有頂天状態を省みた社長は、ワンマン経営から従業員中心の経営に舵を切り、組織作りに注力したのです。
全員でピーター・ドラッカー氏のマネジメントやチームビルディングを学び、全社員との四半期毎の1on1面談や社員向け月刊誌「おはよう!通信」の発行などを重ねました。商品開発は他社との差別化を図り20年、ECサイトで得た顧客の生の声と従業員のアイデアを反映した寝具ブランド「ネムリエ」が誕生。診断を基に顧客の快眠をカスタマイズし、長期的にサポートするオリジナルモデルです。上級睡眠健康指導士の資格も有し、眠りのコンシェルジュ企業を目指しています。
全社を挙げた努力が実り今年9月、「滋賀県女性活躍推進企業認証制度」で三つ星にも認証されました。かつて欧米や香港で勤務した社長は、高い女性従業員比率、育児中従業員のマルチタスクやタイムマネジメント力に対する高評価や積極的な採用など、性別やブランクに関わらず人的資本を重視した職場環境に取り組み、経営に有利に作用しています。
同社の強みは、商品企画から開発、製造、販売、アフターフォローまでを貫く「全体工程請負人」であること。川上から川下まで全てのパートナー企業を琵琶湖周辺に有し、「琵琶湖ワンストップ生産システム」を形成していることです。既存事業のリソースと新規事業で得た情報のサイクルにより、異なる知の組合せを変革につなぐ両利きの経営のメリットを駆使しているのです。当産業支援プラザの補助金事業もタイムリーに活用しながら事業を進めています。
「組織力をさらに強化し、良質な眠りを贈る文化の創造も展開し、人々の毎日の活力を提供し続けたい」。ブレスエアーを軸に「モノづくり(加工事業)」と「コトづくり(EC事業)」という両輪を回し、付加価値を上げて社会貢献する近江化成工業。「競合は自分たちの慢心」と語る小林社長の目には、次なる野望がのぞいていました。
企業概要
近江化成工業株式会社
(東近江市宮荘町511)
https://www.ohmikasei.com/熱プレス事業、三次元網状繊維構造体加工事業、ブランド事業(ブレスエアーを主軸とした開製販一体型D2C事業)。
お問い合わせ先
(公財)滋賀県産業支援プラザ
情報企画課
- TEL
- 077-511-1411