高麻株式会社

2024/9/25 毎日新聞(滋賀版)

2025年に開催される大阪・関西万博で、滋賀が誇る地場産業と自然の恵みを掛け合わせて生まれたスタッフ用ユニフォーム(帽子)の採用が決定しました。素材となる「琵琶の葦布(よしぬの)」を開発したのが、高麻株式会社です。

同社は1964年、漁網や麻袋の機屋として創業。その後、寝装具の生地作りを得意とする織物メーカーになりました。繊維の街、高島市に軒を連ねた同業他社との違いは、最大280㎝という広幅のドビー織(細かな幾何学模様の柄織)ができるレピア織機(剣のようなヘッドで緯糸を横入れする織機)を有したこと。さまざまな素材への汎用性が高く、柔らかな肌触り、通気性の良さ、上質な光沢感などを醸すことができるのが特長です。

転機は93年。取引先の倒産により、それまでの委託加工から提案型メーカーへの転換を迫られました。中村正博社長は、繊維や糸について一から学び直し、ニーズを訊ね回り、2000点以上のオリジナル生地を開発。この蓄積は今なお大きな強みとなっています。同市の伝統織物「高島ちぢみ」にも取り組み、独特の織機を生かしアウターやキルトケットなどのサイズの大きい製品が主力になりました。また、NASAでも活用されている温度調節素材を使用した「アウトラストワッフル」を開発。さらに2019年、繊維産業で栄えた高島市の活性化に貢献すべく、琵琶湖岸に群生する葦を生かした「琵琶の葦布」に着手したのです。

収穫した葦を粉砕し、マニラ麻の繊維に混ぜて撚糸にした葦和紙糸を、多様な生地に織り込んだ「琵琶の葦布」は、和紙ならではの吸湿性とさらりとした触感があり、服、タオル、マスク、シーツなどの寝装具に、また靴素材(帆布)などに適します。葦素材の構成比が難しく、同社ならではの職人技が光ります。コシノジュンコさんデザインのスーツをはじめ、県立大学の学生の企画によるエコバック、葦製の歯ブラシを入れる袋、泉州タオルとの共同開発、インテリア、アクセサリーなどに使われ、近年、話題を集めているオリジナル素材です。

中村社長は「びわこ高島の葦を守る会」を立ち上げ、毎冬30名以上のボランティアを募り、保護地域である同市針江浜の葦狩りを行い、葦が生育する環境作りを通じ、琵琶湖の生態系や水質の保全、湖岸の消波・浸食防止、景観の保護、CO₂削減にも尽力しています。近年の生活様式の変化で減少している葦簀、かやぶき屋根、夏障子などに代わる葦の新たな価値を広く問いかけ、滋賀の伝統の技と自然を同時に守る旗振り役を務めているのです。

「琵琶の葦布」は滋賀と大阪の架け橋にもなり、9月上旬、大阪の高校生が研修で高島市を訪問。両県の共同により完成した万博のユニフォームが、SDGsにつながっていることを学んでいました。

万博は、世界中に高島、そして高麻の魅力を発信するチャンスになるでしょう。「滋賀が誇る商材として『琵琶の葦布』を大きく育て、異分野とも積極的にコラボしていきたい」。中村社長は、商品開発や販路拡大に共に挑む人材や企業を求めています。今、琵琶湖の環境に関わるさらに新たな糸作りにもチャレンジしているとのこと。地元愛を県全体で共有し、貴重な地域資源を時流に即した有効活用の創造を続けることで次世代に繋ぎたいと切に思いました。

企業概要

高麻株式会社

(高島市新旭町藁園2001-1)

http://takaasa.jp/

広幅先染めドビー織物・寝装用生地・インテリア生地・雑貨生地製造。

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(公財)滋賀県産業支援プラザ 
情報企画課

TEL
077-511-1411

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