【毎日新聞(滋賀版)】「株式会社いと」を紹介する記事が掲載されました
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株式会社いと
2024/8/28 毎日新聞(滋賀版)
一流シェフの料理に彩りを添えるだけでなく、SNS映えや自宅で使う身近な食材として近年ニーズの高まりをみせているエディブルフラワー(食用花)。日本の市場の伸びが欧米に比べ緩やかだったのは、農薬使用、商品種類の僅少、鮮度不足、長期保存が難しいなどの課題があったからかもしれません。これらを解決すべく、品質から栽培、管理、摘み取り、配送まですべてにこだわり、「美しい花を美しいままに届ける」細やかな心配りが顧客の心を掴み、シェアを伸ばしている株式会社「いと」を訪ねました。
農地の中に建てられた80㎡のハウス内には、ペンタス、バーベナ、ランタナなどの旬を迎えたエディブルフラワーが咲き誇っています。同社のこだわりの一つは、無農薬・無化学肥料栽培。真夏のハウス内での駆虫も手作業で、面倒をいといません。二つめのこだわりは、季節や環境に左右されながらも栽培スケジュールを立て、1年中花が絶えぬよう20~30品種を育てること。常に顧客からの多様なニーズに応えるための配慮です。三つめのこだわりは、長期保存が可能なこと。出荷日の朝に摘み取り、保水状態を維持したままクール便にするため、種類によっては1週間以上日持ちします。さらに押し花加工を施したドライエディブルフラワーを開発し、未開封状態で加工日から約1年の賞味期限を実現。他社製に比べ縮むことなく形状や色合いが均一で、加熱処理しても品質低下が少なくマカロンなどの焼き菓子にも利用できると好評です。甘味、酸味、苦味などのバリエーションや高栄養価、人目を引く華やかな演出などを楽しんでもらえるよう、相談に応じ食材に合わせたさまざまな提案が可能なので、リピーターも続出です。
山崎いずみ社長がエディブルフラワーを手掛けたきっかけは、祖父母が営む養蜂場でのミツバチの大量死でした。「ハチと人が同じ花を分かち合う世界を」をコンセプトに、持ち前のチャレンジ精神で独学と試行錯誤を重ね、2017年に持続可能な農業に着手。琵琶湖の水草たい肥や腐葉土、米ぬかを使った土づくりから始めました。花を通じて人の思いや喜び、癒やしを届ける「笑顔の裏方でありたい」との願いは、全国各地のホテル、レストラン、カフェ、和洋菓子店など月に30~50社との取引にまで広がっています。スタッフは子育て中の女性ばかり。「可愛い」を共通言語に、女性ならではのセンスを生かした商品戦略が強みです。「各家庭への気配りや失敗を容認する寛容さがありがたい」と皆、社長を慕います。今後は「香り」をキーワードに新たな展開を考案中です。
実は山崎社長は、地元で活躍している女性社長を応援、発掘する「J300地域アンバサダー」(運営:女性社長.net)でもあります。夫の病気、事故、怪我が立て続く中、13年に専業主婦から起業。自身の経験から滋賀に住む女性が子育て中も通勤に時間を割かずに働けるようにと、県初のコワーキングスペース「ROOT」を創設したのが始まりでした。フレキシブルな空気感が人気のオフィスは、特にコロナ禍に需要が増し、現在は11社20名以上が入居。フリーランスのライター、不動産、訪問介護などさまざまな事業者の拠り所となり、起業家同士のネットワークも形成されています。自身は、地域に潜む企業をメディア発信すべく2社目を創業するなど、根っからの起業家魂の持ち主です。
「誰もが幸せになれる生き方、性別に関らずフラットな働き方ができる社会を創りたい」。山崎社長のビジネスセンスは時流に乗り、複数の点が線で繋がり始めました。比叡山の開祖である伝教大師最澄が唐から薬用として持ち帰ったとされ、今絶滅の危機にある日本最古のエディブルフラワー、坂本菊の生産にも尽力しているとのこと。料理を引き立てるエディブルフラワーのように、周りのあらゆるものを慈しみパワーを生み出す山崎社長は、留まることなく滋賀に元気を与えてくれています。
企業概要
株式会社いと
(守山市金森町869-2)
コワーキングスペース ROOTの運営、エディブルフラワーの生産・販売、地域社会に貢献する様々なプロジェクトの企画。
お問い合わせ先
(公財)滋賀県産業支援プラザ
情報企画課
- TEL
- 077-511-1411