辻󠄀プラスチック株式会社

2024/5/22 毎日新聞(滋賀版)

国連によると世界平均を上回る継続的な経済成長率が見込まれ、2050年には世界人口の4分の1を占めると予測されるアフリカ市場。「21世紀最大のフロンティア」と呼ばれ世界の注目を浴びていますが、都市化に伴うインフラ整備、産業振興、教育など多くの社会課題が積み上がっている現実があります。中小企業ならではの強みを生かし、先陣を切って迅速にアフリカで商機をつかんだ辻󠄀プラスチックに、成功の秘訣を探りました。

1968年にプラスチックの射出成形で創業し、高度成長期の後に太陽光発電に取り組むソーラー事業を開始。太陽電池とキャパシタを利用した電源システムに着手しました。大学と共同開発した路面に埋め込むLEDをソーラーで発光し通行を補助する「自発光道路鋲」は、得意とする厚みのある強化プラスチックの成形技術に加え、電源不要かつ長寿命な製品として、いち早く広まりました。

しかし、やがて国内需要は限界に達したため2016年、国土交通省の要請を受けてケニアでのアフリカ開発会議で自発光道路鋲についてプレゼンしたところ、自動車利用の普及で多発する夜間の交通事故に対処できると導入が決定。これが、自社技術がアフリカ社会の課題解決に役立つことを知るきっかけとなりました。

続いて現地調査に訪れたタンザニアでは、「道路より先に家に電気を届けて」という声を聞き、喫緊の課題と判断。現地に即した太陽光パネルにつなぐバッテリー不要のソーラー機器を開発し、携帯電話用の出力25ワット型、家電製品を駆動する500ワット型の2種をラインナップしました。いずれも持ち運びでき、ランニングコストも安価です。南スーダンでは、現地の経済的な負担を軽減するためサブスクリプション方式を導入しました。日本と違い一年中安定した太陽光を有効に生かすことができ、夜遅くまで営業可能になった床屋、ガソリンスタンド、キオスク、民間病院などで喜ばれています。

一方、質のいい飲料水不足に悩んでいたセネガルでは、従来の取引先であるクラレの中空糸膜を活用した水浄化システムを考案。自社のソーラー電源システムも運用でき、フィルターは自動洗浄で約5年間交換の必要なし。コンパクトなので移動可能です。日本企業では初めての浄化水の小売販売にも取り組み、県も水環境ビジネス海外展開事業化モデル事業として支援しています。

他にも、ニジェールや南スーダンの学校には、ソーラー電源システムと充電式のLEDランタンを配布し、電化率や就学率を向上するプロジェクトを公的機関と実施するなど、積極的な活動を続けています。

地政学的リスクが潜在し、情報やネットワークの少ない遠い国では、頼りになるのは現地のパートナーです。インターンシップ生として受け入れた日本への留学生が、帰国後に起業して事業パートナーとなり、販売やメンテナンスを担ってくれています。セネガルに設立した子会社の運営も任せています。現地のニーズを伝えてくれるこの重要な仲間を、今後も確実に増やしていく予定です。

「他社にない特殊な技術と、それを形にするチャレンジ精神、パワーが強み」と語る辻󠄀喜勝取締役。グローバルな視野で、アフリカの本質的なニーズを現場で捉え、蓄積した自社の価値を最大限に生かしています。「競合は中国。サブサハラ(サハラ砂漠以南の地域)で毎年1カ国以上に展開していきたい」。現地調査だけで撤退してしまう企業も多い中、大企業にはできないニッチ・ビジネスで世界を舞台に戦う辻󠄀プラスチックの潜在力に、滋賀の域を超えた経済のけん引役としての期待が高まりました。

企業概要

辻󠄀プラスチック株式会社

(東近江市五個荘奥町160)

https://www.tsuji-pla.co.jp/

熱可塑性樹脂の射出成形、アルミフレーム安全柵の設計製作、ソーラーアプリケーション(自発光道路鋲、ソーラー電源システム)。
※企業名は「”辻󠄀”プラスチック株式会社」が正式表記です。

お問い合わせ先

(公財)滋賀県産業支援プラザ 
情報企画課

TEL
077-511-1411

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