匠堂合同会社

2024/3/26 毎日新聞(滋賀版)

ソーラーシェアリング型のハイブリッドビニールハウスの図

七夕にまつわる伝説が残る伊吹山から琵琶湖に注ぐ天野川の河口付近に2020年にオープンした、その名も「七夕いちご園」。連日にぎわいをみせています。一番人気の「あまクイーン」は色形もよく高糖度。今年2月に開催された日本野菜ソムリエ協会主催の全国いちご選手権で、見事入賞を果たしました。

多種多様な約1万5000株のいちごのおいしさもさることながら、話題になっているのは、省エネ・省力化を実現したソーラーシェアリング型のハイブリッドビニールハウス。屋根の一部に設置した太陽光パネルによる発電とLED照明による補光・加温を組み合わせ、ICTを活用した室温管理やCO₂・液肥補給など、栽培に適した環境を制御できる先進的な農業施設です。CO₂の削減効果は1棟あたり年間約50トンで、22年度「しがCO₂ネットゼロみらい賞」を受賞しました。

匠堂4代目代表CEO

開発したのは、地域密着型の工務店「匠(たくみ)堂」4代目の北村卓造代表CEO(47)。23歳から経営を任され、家は単に建てるだけではなく、光熱費や住宅ローン、介護などさまざまな配慮が必要なこと、大切な生命や財産を永く守るためにデザイン以上に性能を重視すべきだと気づき、建築大工技能士の他に、二級建築士、第二種電気工事士、住宅ローンアドバイザー、福祉住環境コーディネーターをも取得しました。

日々研究を重ね、考案したオリジナルブランドが、「未来笑家(わらいや)」。高い断熱性能と太陽光発電を備えたゼロエネルギー住宅です。トリプルガラスの標準化、屋根面の厚さ400ミリの断熱材使用、床の基礎断熱(基礎コンクリートを断熱材で覆う工法)により、外皮平均熱貫流率(熱損失量を外皮面積で除した値)は0.32という低値を実現。低燃費・低コストでマイホームの夢を叶えることができる、住人にも環境にも快適な家です。耐震等級3相当の高い耐震性能も有します。

ビニールハウスで育てた苺

農業経営に参入したきっかけは20年、地元自治会所有の約9000平方メートルの遊休地で太陽光発電をやらないかとの勧めでした。ビジネスと環境保全の両立、食料自給率の低下、近隣農家の高齢化、県北部特有の気候などを鑑みた末、思いついたのがこのハウス。本業の家づくりで培ったあらゆるノウハウを設計・施工に生かし、独学で習得した農業手法によるいちごの自社農園が完成したのです。夜はLED照明で天の川を再現し、幻想的な「星空いちご狩り」を楽しみたいと県外からも来園。カフェ経営、雇用創出、ふるさと納税返礼品にもつながり、町おこしの観光資源として北近江の振興に貢献しています。県プロフェッショナル人材戦略拠点による副次的なアドバイスも、人材マッチングや経営課題の解決に役立ちました。

「琵琶湖のほとりに育ったためか幼少期から環境意識が強く、小学生で彦根城の堀の温暖化によるマラリア対策を研究し、地球に優しいエンジンを作ることが夢だった」と語る北村CEO。テスラ社のEVに未来を感じ、現在、同社認定EV充電設備工事店として、災害時にも地域に役立つよう、蓄電池を有効利用できる住宅を考えています。また、県内の養殖事業者と連携し、農業、再エネに漁業を複合した循環型のビジネスも考案中です。

いちご以外にも栄養価の高い野菜に挑戦したい。人、地域、地球環境にいいものを求め、目の前にあるひとつひとつの課題に挑むうちに、いつの間にかビジネスの領域が広がった匠堂。純粋でひたむきな思いは、さらに先の持続可能な未来を見据えています。

企業概要

匠堂合同会社

(米原市顔戸1361-20)

https://e-takumido.moo.jp/about/

新築、リフォーム、住宅改修、福祉用具の相談、太陽光発電(販売・施工)、オール電化(販売・施工)

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(公財)滋賀県産業支援プラザ 
情報企画課

TEL
077-511-1411

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