株式会社ミヤジマ

2023/11/7 毎日新聞(滋賀版)

ハンマーやプレスなどで金属に圧縮や打撃を与え、鍛錬し成形する「鍛造」。金属の組織が緻密で強くなる古来の加工法で、日本では鍛冶屋による農具や日本刀、鉄砲などの武器の製造に始まり、今や自動車や産業機械などの基幹産業への部材供給という重要な役割を担っています。独自の「シャフトのアプセット鍛造技術」、動力を伝達する棒状の回転軸を素材の先端または中間を加熱して部分成形する工法で貢献している、株式会社ミヤジマを紹介します。

創業は1929年。宮嶋誠一郎現会長の祖父が、彦根の地場産業であるバルブの真ちゅう棒の鍛造を始めました。高価な素材の大半を削り出して成形する当時の手法を「もったいない」と感じた初代は、「宮嶋式弁棒鍛造方式」を考案、54年に特許を取得しました。製品ごとに専用金型を作るのではなく1000種以上の汎用金型を組み合わせ、熱した材料を削ることなく軸方向に加圧し、フランジ(つば)を広げる画期的な工法です。これにより材料費や金型費などの節減、短納期、多品種少量対応を実現。斬新な特殊技術は全国に広まり、生産効率を上げて業績を伸ばしました。

転機は、誠一郎会長が家業を継ぐために入社した89年ごろ。社員の高齢化、経営状況の悪化、重大なクレームの発生などの問題が続出し、誠一郎会長は3代目の社長就任と同時に、品質管理体制の見直し、トレーサビリティと標準化の確立、ISO認証の取得、人材育成など、様々な課題解決に着手しました。ユニークな試みのひとつが「ミヤジマism」という全126条の企業哲学を記した手帳。有志が集い3年掛けて作成した「心の偏差値を上げる教科書」で、毎朝1条ずつ音読し意識を高めています。

社名や制服を改め、明るくなった社風により採用が増え、現在の平均年齢は39歳、バランスのよい構成になりました。努力が実り、経済産業省の地域未来牽引企業に選定。そして何より、1200度の熱や数千トンの力で危険を伴う現場において最も重要な安全パトロールや職場改善に尽力した結果、2021年8月に無災害3000日を達成、今なお努力を重ねています。

当産業支援プラザのISOセミナー、専門家派遣制度、中小企業経営基盤・技術向上等研究会、ものづくりIoT研究会、製造現場のAI・IoT導入促進補助金、県プロフェッショナル人材戦略拠点など、さまざまな支援のタイムリーな活用が超克につながったと、誠一郎会長は言います。

20年、ミヤジマホールディングス株式会社を設立し、事業承継した東名鍛工株式会社(静岡市)と、近隣への配慮と地域貢献を兼ねて設立した農業法人ミヤジマファームを傘下に、鍛造事業の拡大のみならず新分野にもチャレンジし始めました。誠一郎会長はこれまでの歩みを振り返り、「最も大切なものは人材」と断言します。経営理念「ものづくりをもって社会に貢献するとともに、全社員の『いきがい』と『幸せ』を追求する」は、祖父、父、そして誠一郎会長によって磨かれ、21年、4代目の俊介氏にバトンタッチされました。常に先を見据え、鍛えられた鋼のように強くぶれない軸をもつ長寿企業ミヤジマは、高品質と高耐久性の鍛造技術で建設機械、工作機械、鉄道、船舶などの心臓部を、今後も縁の下から支え続けてくれそうです。

企業概要

株式会社ミヤジマ

(多賀町多賀1008)

https://www.miyajima-jp.com/

各種シャフト形状部品の熱間据え込み(アプセット)鍛造、各種金属熱処理加工および機械加工。

お問い合わせ先

(公財)滋賀県産業支援プラザ 
情報企画課

TEL
077-511-1411

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