花まる72 倉英工業(甲賀市)

2025/4/4 毎日新聞

熱した金型や芯金をペースト状の樹脂に浸して被膜を作り、加熱後に冷却し硬化させて製品にする「ディップ成形」。関西屈指の製造規模を誇るのが、倉英工業です。

ディップ成形は、被加工物にじかに接するため、内寸精度が高く形状にとらわれず加工できるのが特徴です。また、樹脂の温度や粘度で厚みや弾力を調節でき、色付けも可能。最大のメリットは、雄型のみで成形できるので安価、短納期、大量生産できること。防さび・防食性、絶縁性、クッション性に優れ、同社製品は自動車部品をはじめ、瀬戸大橋や名古屋高速道路など鋼構造物のボルトカバーに、またワイヤーハーネス類・端子・工具用カバー、傷防止や滑り防止の被覆などで我々の安全を守り、広範に重要な役割を果たしています。

同社は1970年、関東に広まっていたディップ成形を関西で展開しようと現会長が創業。苦難の末に新社名に名字の1文字を入れ、先見の明で開いたこのニッチビジネスで成功の糸口をつかみました。2代目の小倉宗典社長は、多様な経験を経て36才で家業を継承。取引先から学んだ「トヨタ生産方式」が社長の本気に火をつけました。かんばん方式、セル生産方式、QC(品質管理)活動などが興味深く、「一個流し生産方式」を実践すると事業価値が上がり経営が面白くなったと言います。

その後、敷地を広げ、大手商社経由で大手自動車部品メーカーを顧客にするなど手腕を発揮し、当時わずか10名足らずで売り上げ・利益を拡大しました。

強みの一つは「品質の高さ」。ISO9001認証の取得はもちろん、たとえ使い捨てのキャップでも全数検査を欠かしません。二つ目は「納期の早さ」。信頼につながるゆえんです。そして何より「人」。「ものづくりは人づくり」「全員経営」を掲げ、自ら現場に入り、創立50周年には全従業員に手紙を添えた厚志で士気を高める社長を慕う従業員は多くいます。

間もなく開幕する大阪・関西万博では、射出成形による視覚障害者誘導用点字パネルのOEM商品が採用されます。また近年、OEM先と関西大学との共同開発による車いすのブレーキレバーや、ガードフェンスやバリケードの足のキャップなど、福祉、インフラ、土木などのポテンシャルの高い多分野からの需要が急増とのこと。「時流に応じ、世の困りごとを解決する優れたディッピング成形・射出成形技術の価値を承継していきたい」。自社成長のためにひたむきに走り続けてきた社長は今、大局的な視野で未来を見据えています。

企業概要

<倉英工業株式会社>

甲賀市土山町鮎河881。
樹脂製品・プラスチック成型品の製造、ディップ成形、射出成形。

https://soei-kk.co.jp/

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(公財)滋賀県産業支援プラザ 
情報企画課

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